異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!

父の過ち(ジェナロ)

(子ども達は、打ち解けるのが早いな)

 執務室の窓から中庭で遊ぶ子ども達の姿を確認したジェナロは、昔を懐かしむように目を閉じる。

 ――愛のない政略結婚でジュロドの母親と結婚した。
 それがジェナロ・ハリスドロアにとって、悲劇の始まりだった。

 跡取りさえ産めば、妻になど用はない。
 彼は徹底的に彼女を避け、必要以上にかかわろうとしなかった。

『どうして奥様に、冷たくするんですか!?』

 そんな妻の姿を目にしたメイドがジェナロに直談判してきたことにより、ロルティの母親との関係は始まった。

『私は奥様が、かわいそうでなりません』

 彼女が妻を思いやるたびに、その優しさにジュロドは惹かれていった。

(このままではいけない)

 妻と関係を続けている限り、彼女はけして振り向いてなどくれないだろう。
 そう考えたジェナロは、妻に離縁状を叩きつけた。

『ジュロドを置いて、1人で出て行け』
『あなたはいつもそう! 他人を都合よく扱い、用が済んだらすぐに捨てる! あの子だって、きっとそうなるわ!』
『貴様と彼女を、同列に扱うな……!』

 彼は間違いを正すため、大金と引き換えに妻との離縁を成立させた。
 ジュロドはしばらくの間大泣きしていたが、乳母にあやされたらすぐに大人しくなる。
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