異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
『今度はあの子と一緒に、墓参りに来な!』

 ジェナロはその足で神殿に向かい、愛する女性の娘を保護しに向かった。

『できません』

 ――そのはずだったのだが……。

 どれほど多額の金銭を支払うと告げても、神殿はロルティの引き渡しを拒否した。

 彼女が聖なる力を使える聖女見習いとして特別な教育を受けているため、今さら父親が現れた所で引き取れないと言うのだ。

『無理です』

 何度も交渉を重ねたが、神殿側は拒否の一点張り。
 正当法で彼女の忘れ形見を引き取るのは無理があると知った彼は、奥の手を使ってロルティを奪い取ると決めた。

『父さん! 辞めたって、どうして?』

 そのためには信頼のおける男性の協力が必要不可欠だ。
 ジェナロは熟考の末、息子の護衛騎士兼友人として雇っていた少年を神殿に送り込む。

 その結果ジュロドからはその騎士を雇い直してくれと懇願されたが、今は愛のない政略結婚の末に生まれた息子の願いよりも、愛する人から生まれた娘を助けることが最優先だ。ジェナロは自身に縋るジュロドに冷たい言葉を投げ掛け遠ざけた。
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