異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
『被検体番号GH6658 神獣と断定』

 精密検査の結果、ロルティのペットとして飼育されているアンゴラウサギは、この世界で生息している姿を見ることすらも珍しいと言われる神獣だと発覚した。

(アンゴラウサギのようなもの、が正しいのだな……)

 この獣は大人しく、活動的なロルティが外に連れ出そうとしても絶対にその場から動かなかった。

 それを不審に思ったジェナロが調べを進めた結果、こうした事実が明らかになったのであれば――この獣自身が特別な存在であると気づいていると考えるべきだろう。

(ロルティのそばにいるのは、聖なる力が使えるからだろう)

 ロルティは聖女見習いとして厳しい訓練に耐えた結果、聖なる力を使って人々の傷を癒やせるそうだ。

 それが神殿に命を狙われる原因にもなっている特殊な事情ではあるのだが――この力をどうにかして失わせるのは、難しい。

 ならば、公爵家の兵力を高めて来たるべき戦いに備えておくのが、唯一彼が愛娘にできることだろう。

(俺は愛する人を、守れなかった)

 ジェナロは拳を握り締めながら、再び窓の外を見る。
 いつの間にか、子ども達の姿は消えていた。
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