異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 父親が恐ろしいとブルブルと全身を震わせながら、ロルティの胸元に抱きついて離れなくなってしまった。

「うさぎしゃん。怖くないよー?」
「よし。ロルティ。そのままそいつを、押さえていてくれ」
「じっとしていれば、すぐに終わるからね」
「はーい!」
「きゅう……! むきゅ……!」

 アンゴラウサギは見ているロルティがかわいそうになるくらいブルブルと震えるため、ロルティは獣の垂れ耳を優しく撫でて落ち着かせてやる。

「尋常じゃないくらいに怯えているけど……。この子、何かあったのかい?」
「うんん。わたしもよく、わかんなくて……」
「傷つけられることを、とても恐れているみたいだ」

 ロルティが優しく長い耳を撫でて恐怖が和らいでいるからだろうか。
 チョキチョキと毛を刈る音が聞こえても、アンゴラウサギは大人しく毛刈りを受け入れている。

 恐ろしい音が聞こえるだけで、痛くはない。
 そう獣が毛刈りは恐ろしいことではないのかもと思い始めた瞬間――。

「お肉も切っちゃうって、思ってるの!?」
「むきゅう!?」

 ロルティの叫び声によって、再びアンゴラウサギはブルブルと怯え始めてしまった。
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