異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(あの場所に彼がいなかったら、生きるのは諦めよう……)

 ロルティは今すぐに泣き叫んで死にたくないと土の上で転げ回りたい気持ちを抑えながら、必死に足を動かした。

「聖女見習い様! こちらです!」
「カイブル……!」

 ――彼は約束の場所で、ロルティを待っていてくれた。

 彼女は大粒の涙を流しながらカイブルに飛びつこうとしたが、再会を喜ぶ時間すらない。他の聖騎士達は、養父の命令に絶対服従だ。

 見つかればすぐにでも、幼子の命は刈り取られてしまうのだから……。

「この抜け道をまっすぐ進めば、迷いの森に到着します」
「カイブルは? 来ないの?」
「申し訳ございません。私には、別の役目がありますので……」
「わたし、1人は嫌だよ……!」

 迷いの森に繋がる小さな抜け道は、小さな子どもだけが通れる狭くて細い入口だ。

(カイブルはここを通れないって、わかっているけど……)

 こうして無事に合流できたのだから、一緒に神殿の外に出たいと願う幼子の気持ちを拒絶することは彼にとっても心苦しいのだろう。
< 5 / 75 >

この作品をシェア

pagetop