異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 そんな姿を見つめる父親の瞳もまた、先程までの剣呑な表情が嘘のように優しく穏やかな時間が流れた。

「上空にゴミが浮かび上がっているのが、わかりますでしょうか」
「どれ?」
「これ、かな……」

 彼女は見つけられなかったが、ジュロドはすぐに小さな埃や草、土などの不純物が混ざっていることに気づく。
 どうやらメイドの話によれば、これらを根気よく取り除いていく必要があるのだとか。

「おにいしゃま! 見つけるの、すっごく上手!」
「まぁね。1人前の剣士は、目もよくないといけないから……」
「はれ?」

 兄の言葉を疑問に感じた彼女は、素っ頓狂な声を口にする。
 ジュロドが剣士を目指しているなど、初めて耳にしたからだ。

(おにいしゃまは、カイブルみたいになりたいのかな……?)

 ロルティは神殿で別れた聖騎士の姿を思い浮かべながら、ジャバジャバとお湯と毛をかき分けゴミを浮かそうと必死になる。
 そんな妹の姿を目にした兄は、どこか寂しそうに微笑みながら浮かび上がってきた不純物をひたすら取り除いた。

「僕の将来なんて、どうでもいいんだよ。ロルティの未来のほうが、ずっと大事だから」

 ポツリと呟いたジュロドの言葉には、一体どんな意味が隠されているのだろうか。
< 51 / 192 >

この作品をシェア

pagetop