異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(聞いてみたいけど、触れちゃいけないような気がする……)

 ロルティは結局、その話を兄に聞けなかった。

「ある程度ゴミを取り除いたら、こちらにご用意したザルへご移動ください」
「ジャバジャバー!」
「こら。もっと水気を切らないと……。ドレスが濡れちゃうよ」
「着替えるから、いいんだもーん!」
「いいの?」

 ジュロドはそう言う問題ではないのではと父親を見上げたが、頷いて肯定するのならば彼がどれほど騒いだところで意味はないと悟ったのだろう。

 妹の好きにさせようと決めた彼はロルティのサポートをしながら、水気を吸って重くなった毛をザルの中へ一緒に移動させた。

「以上で、本日の作業は終了となります」
「えー? もう、終わりー?」
「はい。これを天日干しし、水分がなくなったあとに糸にする作業を行いますので……」
「毛を乾かすなら、庭を使うといい」
「よろしいのですか?」
「ああ。誰にも触らせるな。少しでも量が減るようなことがあれば……」
「しょ、承知いたしました」

 ジェナロがメイドにクビを匂わせれば、たらいと籠を手にした侍女はそそくさと兄妹の部屋から退出する。
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