異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「ロルティ。なんだか元気がないみたいだけど……。具合でも悪いの?」

 初めて父親とともに街に出てから数日後。いつまで経ってもロルティが元気なふりをしていることに気づいた兄からそう指摘された妹は、どう返答すればいいのか迷っていた。

(どこかが悪いわけじゃないのは、自分でもよくわかってるけど……)

 まだ数日しか公爵家で過ごしていないが、父親と兄がロルティのことを大切にしてくれることは幼子にもよく理解できている。

 だからこそジュロドは妹が心を痛めていると打ち明ければきっと、自分が受けた痛みのように思い嘆き悲しむはずだ。

(おにいしゃまを、悲しい気持ちにさせるなんて。絶対に駄目……!)

 ロルティはふるふると首を振り、兄の言葉をジェスチャーで否定した。

「本当に、大丈夫?」
「うん」

 訝しげな視線を向けられたロルティは、何度も頷き兄に問題ないことを伝える。

 ジュロドは最後まで妹に疑いの眼差しを向けていたが、彼女の意志が硬いことに気づいたのだろう。
 呆れたように微笑んでから、まったく別の話題を口にした。
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