異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「アカイム! 単独行動をするなと、何度言えばわかる!」

 ドタバタと慌ただしい足音が響き渡った直後、彼のファミリーネームを呼ぶ上司の怒声が聞こえてきた。
 こう言う時は、たとえ自身に非がなかったとしても謝罪をしておくのが早めに相手の怒りをおさめる秘訣だ。

「申し訳ございません」

 勢いよく頭を下げれば、上司も満足したらしい。

(このまま、やり過ごせればいいのですが……)

 彼の不安が上司に伝わったのだろうか。
 頭を上げれば、訝しげな視線とかち合った。

「アカイム。ネックレスはどうした?」

 どうやら頭を下げた際にジャラリと独特の金属音を響かせ揺れていたはずのネックレスが、胸元から忽然と消えていることに注目したようだ。

(まさか馬鹿正直に、ロルティ様へ預けたなど言えるわけがない……)

 当たり障りのない嘘をついてこの場を切り抜けようと決めたカイブルは気落ちした様子で肩の力を抜くと、上司に向かって言葉を紡いだ。
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