メリーゴーランド
メリーゴーランド
「ひゃっほーぅい!」

ペガがメリーゴーランドの真似をして回り始めた。

メリーゴーランドの近くを飛ぶには翼が邪魔なのだろうか、なるべく小さく広げ、平行を保っている。

なかなか器用だ。



「乗るか?」

ユニにきかれて椿が

「いいよ」

と、首を横に振る。

「ここでこうして見てるほうが楽しいんだ。今は。」

するとユニは何も言わず、椿の隣にたたずんだ。

(ふたりのこういうところが好きだなあ)

おもわず何でも話してしまえる、ユニのこういう姿勢も、ああやってはしゃいでいるペガの様子も両方とも。

(両方好きだ。)

くらべることなんてできない。



「私は、メリーゴーランドに最初から乗ってて、しがみついてるだけで精一杯だったけど」

言いながらわかることがある。このときもそうだった。

「うん?」

「目まぐるしく変わる景色に、一体何が起こっているのかわからなくって怖かった。」

「そうか。」

「外から見てはじめて、かわいいもんだってわかった。」

「そうか。」

「それに、すこし楽しいものかもしれないって、はじめて思った。」

「ふうん?」

今は外から眺めているだけでいい。でも、いつかはあそこへ戻るのだ。

そのとき、今と同じことを思えるだろうか?

夜の闇のように深入りすると抜けられなくなりそうで、椿は考えるのをやめた。

「……そろそろ目をまわしはじめたな。」

椿はぷっと吹き出した。ベガはふらふらになっていて、それでも意地からだろうか、回り続けている。

「助けに行くか。」

「そうだねえ。」

「じゃ、ちょっと乗れ。」

「うん」

翼ではなく、蹄で空を駈ける者は、少女を乗せて飛び立った。

メリーゴーランドの、まばゆい光を旋回し、そして翼を持つ者を迎えに行くために。

< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

かたつむりの恋心
ゆい!/著

総文字数/8,322

恋愛(その他)30ページ

表紙を見る
とびらをあけて~大人になる日~
ゆい!/著

総文字数/4,997

絵本・童話11ページ

表紙を見る
ビバ!マジック~ドキドキ☆同士~
ゆい!/著

総文字数/30,601

ファンタジー200ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop