魔法学園の片隅で、先生に玉砕覚悟で告白したらプロポーズされました
「戻ってくるまで、私待ってるから。卒業したって、何度も学園に確認する。戦況が悪くなって、募集が広がれば私だって戦場に行く」
「それはやめろ。何があっても生きていてくれ。できれば、優しい男と結婚して子を成して、幸せに暮らしてくれ」
「私は先生が好きなんです! そんな振り方、酷い……。絶対に結婚しない。絶対に待ってる」
「お前……言葉なんてのは自分への呪縛だ。お前は優しい奴だから、守ろうとしちまうだろ。そんないらん約束を。絶対に待つな。気持ちは嬉しい、ありがとな。でもお前は俺に振られたんだ」
「認めません!」
「ええ……」

 自分でも何を言っているのか、分からない。
 でも最後なら、思い切り我儘を言いたいと思った。

「先生が私のことをなんとも思っていなかったとしても、無事を確認するまでは誰かと付き合ったり、結婚なんてしないから!」
「なんだそりゃ……しょーがねー奴だ。本当に、しょーがねー奴」

 ふてくされたようにそう言って、頭を抱えた。バツの悪そうな顔を私に向けて、ふっと吐き出すように苦笑する。

「俺にとってもさ……、お前は救いだったよ。さっき言ってた女生徒の変化は、教室でも感じていたんだ。俺は教師になったばかりで若くて……、放置しちまった。あいつを殺したんは、俺だ。同じ恋でも……健康的で可愛い顔を向けてくれるお前に、救われていた。この世界の力を引き出すのに信心は必要だが……そんなものなくたっていい。ずっと弱いまま、安全な場所で守られていてくれ。俺も……この国を、お前の居場所を守るから」

 私は、先生を救っていたの……?

「そんな言葉で誤魔化されたりしない。先生の無事を確認するまで、誰とも結婚はしないんだから! だから……戻ってきて生きていたら、必ず学園にそう伝えて……」
「はー……まったく、しょうがねーなー。そんなすぐ終わるもんでもねーのに……」
「だからこそ、でしょう」
「しょうがねー、ほんっとに、ほんっとに……しょうがねー……」

 同じ言葉を何度も何度も繰り返した後に、躊躇うようなそぶりを見せながら、先生が懐から何かを取り出した。
 それは、お菓子なんかじゃなくて……。

 高級感のある、上品なケースだった。
 指輪やイヤリングなんかを入れるような……。

「え……、先生?」

 ガシガシと髪をかきながら眉をしかめつつ、先生が口を開いた。
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