ヨルの探偵Ⅱ


 ────月の欠けた、その夜。



 夜も深まった午前一時。

 男子生徒ことナナオくんから、前に送ったアドレスに見取り図ともに所在地が送られてきた。


「フフ、何かお誘い来たノ?」

「そうだねぇ」


 会員証は受け取りに来い、ということらしい。

 既に酔いもいい塩梅に回り、合法的じゃない煙草をマレくんと嗜んでいたのに、今から外出ないといけないのか。面倒だなぁ。

 被害に遭いたくないと夜白と紗夜は早々に逃げたし。冷たいペットだ。

 そんなわけで、飼い主ヨルとマレくんの一騎討ち中。


「アッ、勝ち逃げするつもりデショ?」

「違いま〜す。元々私の勝ちで〜す」

「ボク、まだショットいけるヨ? ドウスル?」

「……私、カタカナ言葉わかんないんだよね」


 嘘だよね? ショットはむりむり。

 雑に嘘をつけば、くすくすとマレくんが私の口から煙草を奪っていった。

 エメラルドの瞳が、ゆらゆら溶けるように瞬きする。実のところ、双方結構キてる。これ以上続けたらどっちも負ける。

 職質されたらおわりだよー。


「はぁ、腰が重い」

「重い? なら、立てなくさせテあげるヨ」

「今日はヤんないよ、バカマレくん」


 最近すぐ下ネタに話を持ってくんだから、と小さくため息を吐いた。

 今日はあれから帰宅して、一通り情報をハッキングして疲労困憊。わかったことは幾つかあったけど、潜入はノーリスクでは厳しいことが浮き彫りになっただけだった。

 条件提示……。どうしようかな。

 立ち上がってスマホの地図を確認しながら、割と近い場所だと急ぐのをやめた。

 考えながら、ゆっくり行こ。


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