ヨルの探偵Ⅱ
────月の欠けた、その夜。
◇
夜も深まった午前一時。
男子生徒ことナナオくんから、前に送ったアドレスに見取り図ともに所在地が送られてきた。
「フフ、何かお誘い来たノ?」
「そうだねぇ」
会員証は受け取りに来い、ということらしい。
既に酔いもいい塩梅に回り、合法的じゃない煙草をマレくんと嗜んでいたのに、今から外出ないといけないのか。面倒だなぁ。
被害に遭いたくないと夜白と紗夜は早々に逃げたし。冷たいペットだ。
そんなわけで、飼い主ヨルとマレくんの一騎討ち中。
「アッ、勝ち逃げするつもりデショ?」
「違いま〜す。元々私の勝ちで〜す」
「ボク、まだショットいけるヨ? ドウスル?」
「……私、カタカナ言葉わかんないんだよね」
嘘だよね? ショットはむりむり。
雑に嘘をつけば、くすくすとマレくんが私の口から煙草を奪っていった。
エメラルドの瞳が、ゆらゆら溶けるように瞬きする。実のところ、双方結構キてる。これ以上続けたらどっちも負ける。
職質されたらおわりだよー。
「はぁ、腰が重い」
「重い? なら、立てなくさせテあげるヨ」
「今日はヤんないよ、バカマレくん」
最近すぐ下ネタに話を持ってくんだから、と小さくため息を吐いた。
今日はあれから帰宅して、一通り情報をハッキングして疲労困憊。わかったことは幾つかあったけど、潜入はノーリスクでは厳しいことが浮き彫りになっただけだった。
条件提示……。どうしようかな。
立ち上がってスマホの地図を確認しながら、割と近い場所だと急ぐのをやめた。
考えながら、ゆっくり行こ。