ヨルの探偵Ⅱ
土曜日のお昼。
自分のベッドで久しぶりに午後まで爆睡してしまった。鈍い身体でのっそり起き上がると、ベッドの端でブロンズが揺れている。
「……おはよう?」
「おはよう。……月夜、なんか甘い匂いしてる」
「あー、うん。頭がシュガーになるヤクを……」
「ヤク?」
あっ、やば。口が滑った。
寝惚けた頭でどうするか考える。しかし思い浮かばず、首を傾げた翔くんの頭を雑に撫でてみたら誤魔化しがきいた。最近の彼はだいぶちょろい。
いつもより低速でベッドから降り、朝陽と虎珀くんの所在を聞こうとすれば、勢いよく部屋のドアが開かれる。
「月姉! 朝陽とバスケしてくるー!」
「姉ちゃん、ご飯はお茶漬けあるからそれ食べて。じゃあ、いってきます」
「ふぁーい、ありがと。いってらー」
夏休み明けても中学生は元気だ。
パジャマのままノートパソコンを持って下に降りると、リビングに全員大集合。蒼依くんと莉桜くんは朝陽が持ってるゾンビゲームに熱中していた。
それを眺める恭に、優雅に足を組んで珈琲を飲んでる優介くん。
ふむ、みんな元気そうでなにより。
「お茶漬け、沁みる……」
「なんか、月夜ちゃん甘い匂いするね」
ぎくっ。気づかなくていいよ、優介くん。
全員におはようと挨拶して、寝巻きのまま顔を洗ち歯を磨いて朝ご飯。ぽやぽやしながらお茶漬けを食べる私に、すんっと鼻を鳴らした優介くんからわざと目を逸らした。
あのあと、BARに戻ったら何故かいなかったマレくん。
数分後帰ってきたけど、何をしてたか教えてくれる訳もなく。一騎討ちを再開して私は潰された。お酒と薬入りの煙草の組み合わせは良くないね。