ヨルの探偵Ⅱ
時間も勿体ないのでさくっと説明してしまうと、私は飲みかけの珈琲カップをテーブルに置いた。
「ニエンテの後ろには、君らだけじゃ到底太刀打ちできない巨大な組織がいる。それもざっと調べたけど情報は少ない。多分、最近日本に進出してきたから」
「……いや、まって、なんで知って、」
「調べたからだよ。疑問は後で。ここからが本題で、ニエンテのいる地区は、この前捕まった峯岸組の管轄だった。おかしいよね? 誠桜会が動かないの変だって思わない?」
私の話を止めるな、と優介くんの制止を振り切って一息にわかりやすく噛み砕いて話す。
実は、昨日調べてわかったことがある。誠桜会が動かないのには、ひとつの理由があった。
────臓器売買のルートを警察とともに追ってるのだ。
しかも、臓器売買の元は奴隷売買に繋がっていた。そんな商売をしてる奴らが日本に進出してきた。警察も相当焦ってるはず。
しかし中々尻尾を出さない彼等に手を焼いていたところで、半グレ集団ニエンテが大きく動き始めた。
それで、誠桜会にも待ったがかかったんだろう。
「優介くん、雲竜兄弟は白州高の生徒じゃないんだよね?」
「あぁ、違う」
「じゃあ、子飼いだね。彼等を脅して寝返らせるために侵入する。つまり今回は布石を巻きに行くだけ」
「……ま、まって〜頭が追いついてませ〜ん」
ストップ、と手のひらを向けてきた蒼依くんにため息と冷めた目を向ける。遅いよ、早く追いついて。
ずっと黙ってる恭にも目を向けつつ、私の行動にもう嫌な予感がしてる翔くんと莉桜くんがジト目を向けてくるから視線を逸らして珈琲に口をつけた。
「……もういい?」
「ん〜先どうぞ、話して〜」
「明日の夜、私と蒼依くんと翔くんが潜入します。他の3人は待機。ちなみに蒼依くんは女装ね」
「やっぱりまってくれない?」
……女装? と蒼依くんの顔が引き攣る。
うん。女装です。