ヨルの探偵Ⅱ
準備済みなので、リビングの隅に置いてあった大きな袋を顎で指し示す。なんと言おうと異論は認めません。蒼依くんには女装してもらいます。
逃げ場をなくした蒼依くんが唖然しているのを、莉桜くんがちょっとほくそ笑んでる。
ふふ、私も内心笑い転げてるよ。
「えっ、ま、え、なんで俺なのよ?」
「恭は目立つし、優介くんには運転頼みたい。莉桜くんは情報担当で、翔くんは警備として潜入してもらうから自ずと蒼依くんに決まった」
「なっ、納得いかねぇ〜〜〜」
残念、水無瀬家では私が法の番人。異論は認めぬ。
こてっ、とフローリングの床に倒れ込んだ蒼依くんには覚悟を決めてもらうとして。作戦参謀ポジで私が勝手に指示出してるけどいいのかな? と恭に窺えば目を閉じたまま頷かれた。
なら、結構好き勝手やらせてもらおう。
ノートパソコンにクラブと地区の見取り図を出して皆に見せる。
「優介くん、地区の見取り図は全部暗記できそう? 明日まで」
「余裕だよ、任せてくれ」
「翔くんと蒼依くんはクラブの方もね。蒼依くんには雲竜兄弟の弟の方も頼むからね」
「あとで僕が蒼依には喝入れとく」
「よし。恭、いいね?」
「よるの指示に従う。問題ない」
話がだいぶまとまったところで、もうひとつ。
明日の夜の潜入だが、今回の潜入で大事なことは2つある。
1つ目は、潜入がばれないようにすること。
2つ目は、時間を効率よく使うこと。
小さな足跡ひとつ絶対に見つかってはいけない。これは今回の交渉内容において最も重要。時間に関しては私の問題。それと全ての成功の鍵でもある。
ノーリスクは難しいので、こちらも大事なものを天秤にかけることにした。
────まだ、彼等には伝えないが。
何せ、全力で止められそうなのでね。