手のひらを太陽に
第37話
三人体制での清掃・消毒作業はしばらく続きそうな感じである。仕事が終わってから、コンビニで買っておいたおにぎりを頬張りなから、長々と雑談することが、三人の楽しみのようにいつの間にかなっていた。
時田のゲノムとウイルスに対する勉強意欲はかなりものである。欧米文化が専門であった村岡は、時田に感化されてゲノムとウイルスにかなり関心を持つようになってきた。大学院の博士課程まで席を置いて、研究の訓練をしてきたことだけあって、その知識量の日ごとの進歩には目をみはるものがあるほどである。話の内容がかなり高度になってきていると思う時が増えてきた。
二人の専門的な会話に私の荒唐無稽にも思えるメガネの発想はさすがにまずいだろうと思っていたが、つい話題に出してしまった。しかし、思いもよらず意外だったことは、二人がこの話題に、真面目に反応してくれたどころか、少なからずの関心を示してくれた。
「いやまんざら、荒唐無稽な発想とも言えないよ。新型コロナウイルスのゲノムの配列の意味することがわかればその可能性は否定できないと思うよ」
確か時田は私がこの発想を以前言った時も関心を持ってくれた。今回はさらにより一層の関心を示してくれたように感じた。時田は続けて言った。
「新型コロナウイルスが未知のウイルスとしてこんなにも恐れられているのは、今までのウイルスとその特質があまりにも違うからだよね。無症状者の感染者を通して、多くの人に感染して、今までにもないような恐ろしい仕方で一部の感染者を重症化させる。このようなことがすべて、ゲノム配列の中に書かれているとしたら・・・もしこのゲノム配列を、文字を読むように理解できれば・・・・このウイルスに対する恐れがなくなると思う。ゲノム配列で書かれた情報の意味がすべて理解できれば、RNA配列の塩基の原子の電子の発する信号を受信することができるのではないかという発想までしたくなる。そうすれば、その信号を感知するセンサーさえ開発することができれば、そのようなメガネも可能ではないかと思うよ」
この意見に対して、村岡はなかなか鋭い質問をしながら、その信憑性を崩していった。さすが村岡が毎日勉強していることがうかがえる。しかし。時田は自分の意見が最初から完全に崩されるものであることは十分に理解していたようである。それを重々承知で私の発想に関心を示してくれたのである。
話している内容が科学的に荒唐無稽なところがあっても、重要なのはその発想の奇抜さであることで三人の意見が一致していることは確かなことであった。科学上の歴史を見ていくとその奇抜さゆえに、あるいは失敗したゆえに、今までになかったものを発見発明できたことが多々あることを、村岡はまとめのように言っていた。
時田のゲノムとウイルスに対する勉強意欲はかなりものである。欧米文化が専門であった村岡は、時田に感化されてゲノムとウイルスにかなり関心を持つようになってきた。大学院の博士課程まで席を置いて、研究の訓練をしてきたことだけあって、その知識量の日ごとの進歩には目をみはるものがあるほどである。話の内容がかなり高度になってきていると思う時が増えてきた。
二人の専門的な会話に私の荒唐無稽にも思えるメガネの発想はさすがにまずいだろうと思っていたが、つい話題に出してしまった。しかし、思いもよらず意外だったことは、二人がこの話題に、真面目に反応してくれたどころか、少なからずの関心を示してくれた。
「いやまんざら、荒唐無稽な発想とも言えないよ。新型コロナウイルスのゲノムの配列の意味することがわかればその可能性は否定できないと思うよ」
確か時田は私がこの発想を以前言った時も関心を持ってくれた。今回はさらにより一層の関心を示してくれたように感じた。時田は続けて言った。
「新型コロナウイルスが未知のウイルスとしてこんなにも恐れられているのは、今までのウイルスとその特質があまりにも違うからだよね。無症状者の感染者を通して、多くの人に感染して、今までにもないような恐ろしい仕方で一部の感染者を重症化させる。このようなことがすべて、ゲノム配列の中に書かれているとしたら・・・もしこのゲノム配列を、文字を読むように理解できれば・・・・このウイルスに対する恐れがなくなると思う。ゲノム配列で書かれた情報の意味がすべて理解できれば、RNA配列の塩基の原子の電子の発する信号を受信することができるのではないかという発想までしたくなる。そうすれば、その信号を感知するセンサーさえ開発することができれば、そのようなメガネも可能ではないかと思うよ」
この意見に対して、村岡はなかなか鋭い質問をしながら、その信憑性を崩していった。さすが村岡が毎日勉強していることがうかがえる。しかし。時田は自分の意見が最初から完全に崩されるものであることは十分に理解していたようである。それを重々承知で私の発想に関心を示してくれたのである。
話している内容が科学的に荒唐無稽なところがあっても、重要なのはその発想の奇抜さであることで三人の意見が一致していることは確かなことであった。科学上の歴史を見ていくとその奇抜さゆえに、あるいは失敗したゆえに、今までになかったものを発見発明できたことが多々あることを、村岡はまとめのように言っていた。