堕天使と少女

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一柱　生贄少女

(私は生贄だ。)
ある少女は心の中で思った。その少女の名はヘレリ・ヘルス・ヘレン。生贄だ。
なぜ少女ヘレリは生贄なのか。それは数時間前―

「わ、私が生贄…？」
ヘレリは戸惑って言った。
「そうだ！お前が生贄だ！」
ヘレリの父ベルトは強く言った。
ヘレリは幼い頃に母を亡くし、唯一の父はカルト宗教に入っていた。
「な、何で？」
「なんでって、悪魔の召喚儀式でお前を生贄にするんだよ。」
「そうじゃなくて！なんで私なの！」
ヘレリは叫んで言った。
「お前のその『目』悪魔にお似合いだろ。」
ヘレリはベルトのその言葉に言い返せなかった。
そうヘレリは生まれつき右目が普通じゃなかった。故に周りの人から忌み嫌われていた。
「何で…嫌だよ！それにこの目は好きでこうゆうなったんじゃなくて…」
ヘレリは言い返そうとしたがベルトは怒鳴った。
「うるさい！！こっちだって迷惑なんだよ！！！」
その言葉にヘレリの心はガラスのように砕け散った。
「俺だって嫌なんだよ！！！」
「……分かった……。」
「分かればいいんだ!分かれば!!!」
ベルトは大声で笑って言った。
「……」
ヘレリは心はもうなくなっていた―

悪魔召喚儀式の当夜―
カルト宗教の教祖や信者たちはある深い森の中に集まった。
教祖は魔法陣を書き、唱えた。
「悪魔の王、ルシファーよ。我、汝を召喚する。現れよ。」
すると魔法陣から煙が出て、その中から人が出てきた。
見た目は若い青年で前髪で右目が隠れていた。
その青年は魔法陣から出ると、とてつもない威圧感が襲った。
ヘレリは悟った。
(ああ、悪魔だ。)
「ようこそおいでくださいました、ルシファー様。生贄をご用意いたしました。」
教祖は言い終えるとヘレリを悪魔ルシファーの目の前に押し出された。
「おぉご覧ください、なんとも気色悪い目、汚らわしい。」
教祖は嫌な目でヘレリの右目を見た。
ルシファーはしばらくヘレリを見つめニヤリと笑った。
「ほぉ面白い、この娘もらっていくぞ」
ルシファーはそう言いヘレリを魔法陣の中に連れて行った。
魔法陣からまた煙が出て一瞬、視界が真っ暗になったがまた視界が明るくなった。
そこを見渡すとそこは薄暗い森の中だった。
そこら中おぞましい空気が漂っていて、ここは悪魔の世界だとヘレリは悟った。
「行くぞ」
ルシファーそう言うと進んでいった。ヘレリはちょっとおどおどしながらルシファーについていった。
しばらく進んでいると目の前に大きな城が表れた。
その城の周りは深い堀があった。とても渡れそうになかった。
ルシファーは城の目の前に立つと何かを唱えた。
すると目の前の城の一部の壁が倒れて橋ができた。
「ほら、早く渡るぞ」
そう言われヘレリは小走りで橋を渡った。
ヘレリが渡り終えるとすぐに橋が動き壁に戻った。
ヘレリはふと空を見上げるとそれは綺麗な夜空だった。星は輝き、月は満月。普通の夜空かと思ったが、違った。
月は3つあった。1つは普通の月よりちょっと赤っぽかった。2つ目の月は灰色、そして3つ目は不思議だった。
色は黒と白。黒色は真っ暗の色、白は純白だった。
(不思議だなぁ)
ヘレリはそう思いながら歩いた。
「ついたぞ」
ルシファーの言葉で前を向くと堀の外から見たよりも大きかった。
「早く入るぞ」
ルシファーはそう言い城の中に入った。ヘレリも城の中に入った。
城の中は広く豪華だった。床には赤いカーペットが敷き詰められて、天井にはいかにも高価なシャンデリアがあった。
「ほげぇ～…」
ヘレリはすごすぎて変な言葉がでた。
「ついてこい」
ルシファーに言われヘレリはついていった。
「ここは食堂、あそこは俺の部屋、何かあったら教えろ。」
ルシファーに色々な部屋を案内された。ヘレリは不思議に思った。
(おかしい、私は生贄だ。何で生贄に部屋の場所を案内しているんだろう。)
しばらく考えながら歩いていると前にいたルシファーが止まった。
「ここがお前の部屋だ。」
止まった前には扉があった。
「それじゃ」
そう言いルシファーは煙のように消えた。
「ちょっと…」
ヘレリはため息をついて、とりあえず部屋の中に入った。
「ほぇ～…」
その部屋はとても綺麗な部屋だった。
物はきちんと整とんされ、可愛らしい小物が置かれていた。
「可愛い…」
ヘレリは部屋を見渡し、ベットに座った。すると衝撃が走った。
「ふっかふか～…」
ヘレリはベットに寝転んであくびをした。
(これは現実なのか…？。夢でもこれは結構いい…か…も…)
ヘレリは静かに眠った。