Devilの教え
 鍵の掛かっていないその家に入り、靴を脱ぎながら声を掛けるけど、家の中からの返事はない。


 でもそれはいつもの事で、この家の家族が敢えてあたし達に声を掛けてくる事はない。


「家に来るな」と文句を言う事がなければ、愛想よく出迎えてくれる事もない。


 同じ「家」っていう空間にいるけど、あの部屋だけは別次元って感じ。


 家の中に充満した夕食の匂いはカレーの匂いだった。


 玄関を入ってすぐにある階段を上りながら、また鼻歌なんか歌っちゃってるあたしはそれ(・・)に気付いた。


 何となく。


 本当に何となくなんだけど、雰囲気がおかしい。


 おかしいっていうより、微妙に違うっていうのか――人の気配がない。
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