Devilの教え
 あたしが来てから一時間程が経った頃、アスマが静かに腰を上げた。


「え? アスマ帰るの?」

「んあ? ああ」

 見上げたあたしに面倒臭そうに答えたアスマは、残ってた炭酸飲料に手を伸ばし喉に流し込むと、「ご馳走さん」とスガ先輩に顔を向ける。


 その一瞬。


 スガ先輩がアスマに「いえ」って答えた隙にあたしは素早く立ち上がり、


「あたしも帰る!」

 すかさずアスマの右腕に両腕を絡めた。


「おい、スズ――」

「じゃあ、スズちゃん。駅までアスマ送ってやって」

 慌てたスガ先輩の声を遮ったのは温厚なマサキさんで、にっこりと笑って言われたその言葉に、スガ先輩はびっくりした顔でマサキさんに目を向ける。
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