Devilの教え
「――待って!」

 歩幅の差でもう小走りしないと追い付けなくなったあたしは、大きな声で引き止めながらその背中に駆け寄り服を掴まえた。


「あのね、アスマに聞きたい事があんの!」

「もう勘弁」

 一瞬足を止めた――というよりは、あたしが服を引っ張った所為で止めざるを得なかったアスマに、満面の笑みを浮かべながらそう言うと、ばっさりと短く切り捨てられた。


「違う! そうじゃなくて!」

「お前の質問は疲れる」

 アスマは本当に聞く気がないらしく、あたしが背中を掴んでてもお構いなしに歩いてく。


「だから違うの! いつものじゃなくて!」

 そんなアスマに聞きたいのは、「いつもの」質問ではなくて、


「聞きたい事があんならマサキに聞け」

「だから違うんだってば!」
< 177 / 455 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop