Devilの教え
 聞こえてくる会話とふたりの雰囲気に、完全に呑み込まれたあたしは、目を逸らせなかった。


 スガ先輩の手がアサミ先輩の髪を撫でる。


「離して」って言いながらも、アサミ先輩は自分から離れていく素振りは見せない。


 実際には大した時間が経過していなくても、もう何十分とずっとこうしてふたりが抱き合っているかのように思える。


 妙に静かな空間。


 階下から微かに聞こえてくるテレビの音。


「……アサミ?」

 聞こえてくるスガ先輩の声は切なく、


「……ん?」

 アサミ先輩の声は甘い。
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