Devilの教え
 だから他の事なんて一切考えられなくて、受けたショックの大きさに平常心は吹き飛んで、


「教えて! 駅降りてからどっち方向!?」

 気が付けば“元”彼氏に電話して、そう喚いてた。


“元”彼氏が誰といようがお構いなしに、明らかに電話の向こうの“元”彼氏の後ろから『誰?』って女の声が聞こえてるのに、通話相手の“元”彼氏どころか、その女に聞こえちゃうくらいの大声を出したあたしに、


『は!? え!? は!?』

“元”彼氏はあからさまに戸惑い、困惑し、焦り――。


「アスマの家、どっち方向!?」

『あっ、えっと、ロータリー向いて南』


――それでもあたしの勢いに押されたのか、あっさり口を割った。


「ありがとう」も何も言わないで切ったその電話のあと、“元”彼氏が近くにいたであろう女に何を言われたかは知らない。
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