Devilの教え
「ふーん」

 完全に機嫌がよろしくない方向のアスマは、面倒臭そうに返事をしてジュースを開ける。


 赤い缶を持つアスマの白い手が、その(あざ)やかな色に()え、一瞬、その手に触れられたいと思った。


「時間ねえから」

 ゴクンと炭酸を飲み込んだアスマは、すぐにそう口を開いて、


「うん?」

「俺、時間ねえんだよ。さっきから何回も言ってんだろ」

「あっ、う、うん」

 不機嫌な声出すから、何も言えなくなった。


 アスマは大きな通り――があるらしい方へと顔を向ける。


 そして腕時計に視線を移し、眉間に皺を寄せた。
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