Devilの教え

それぞれの事情


 あたしたちの会話を邪魔したのは、そのタイミングで鳴ったアスマのスマホ着信音で、軽快なリズムにアスマの視線が逸らされた。


 火の点いた煙草を持ったまま、器用にお尻のポケットからスマホを取り出したアスマは、チラリと画面を見てからあたしへとその目を向け溜息を吐く。


 そして。


「――はい」

 スマホを反対側の手に持ち替え、煙草を咥えながら電話に出たアスマの声のあと、微かにスマホから漏れてきたのは女の甘ったるい声だった。


 それで分かった。


 アスマの言ってた「用事」が何なのか。


 正しくは最初からそうだろうとは思ってて、その電話で確信した。
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