Devilの教え
 だからこのアスマとの時間はもう終わりだって、肝心な事は聞けてないのにって、残念な気持ちでいっぱいになったあたしに、


「一時間ほど遅れる」

 聞こえてきたアスマの言葉は信じがたいものだった。


 思わずアスマを凝視(ぎょうし)すると、アスマは片眉を上げて「何だよ」って表情をつくる。


 ここで下手な事言って、「いいの?」とか聞き返しちゃって、アスマの気が変わっちゃ嫌だから、無言で首を左右に振った。


 アスマの言葉に電話の相手は「分かった」って言ったんだと思う。


 アスマは「んじゃ、あとでな」って言って通話を切った。


 そしてポカンとするあたしを見ると、


「ここでお前と別れたら、どういう事だってしつこく電話してきそうだからな」

 アスマは仕方ないって感じの声を出し、煙草を落として靴で踏みつけた。
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