Devilの教え
「女に会いに」

「え!? だって――え!? 待って! 何で!?」

 パニックになるあたしに、アスマは足を止め振り向くと、


「考えがまとまったらメッセージで送れ。気が向いたら見る」

 気だるそうに呟き、「じゃあな」と踵を返した。


「え!? 待って! アスマ!」

 慌てて立ち上がりその背中を追い駆け、すぐに掴まえたあたしを、アスマは透き通るほど白く、美しい顔で見下ろす。


 吸い込まれそうな漆黒の瞳に、思わず言葉を失くすと、


「もう話がねえなら行くっつってんだよ」

 アスマはやっぱり気だるそうに言葉を吐き出した。


 異界からの使者は時間の猶予というものを与えてくれない。
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