Devilの教え
 (なめ)らかな動きに揺れる黒髪。


 その何もかもを吸い込んでしまいそうな漆黒の瞳が、形容しがたい色気を纏ったままあたしに向けられ――。


「なあんでお前が」

 呂律(ろれつ)の回らない口調でアスマがそう言った。


「なあんでお前がここにいんだよ」

 フラフラと頭を揺らすアスマの目は笑っちゃうくらいに(うつ)ろで。


「何でってアスマが呼んだんじゃん。迎えに来いって」

「呼んでねえよ」

 記憶喪失まで起こしてるらしかった。


「呼んだよ! 電話してきたじゃん!」

「電話だあ?」
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