Devilの教え
 到底タクシー代を払える金額じゃなく、だからってアスマがお金を払ってくれる状態じゃないのは確かで――。


「家に着きゃシャンとする」

 あたしの考えを知ってか知らずか、男の人はアスマをタクシーに押し込むと、振り返りそう告げた。


「シャンと……ですか?」

「ああ。部屋までは自力で歩けんだろうよ」

「えっと……じゃあ……」

「んでも一応ついてってやってくれ。もしもって事がある」

「あ……はい」

「家に着いてもこの状態なら」

「この状態なら?」

「本堂行って親父さん呼べばいい」

「え……」

 思わず言葉に詰まったあたしに、男の人は不敵に笑い、タクシーの中を指差す。
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