Devilの教え
 だからアスマの肩に手を掛けて、軽く数回揺すったのに、アスマは起きるどころか「うん」とも「すん」とも言わず、スースーと寝息を立てたまま。


 これは……まずい。


 色んな意味で厄介。


 お金はないし、アスマは起きないし、本堂に行ってお父さんを呼んでくるにしても何をどう言えばいいのか分からない。


 お父さんに「あんた誰だ」って聞かれてもどう説明していいのか分からないし、やっぱりどう考えてもお父さんを呼びになんて行けない。


「ア、アスマ!」

 ハラハラするあたしに、バックミラー越しの運転手さんの視線が突き刺さる。


「アスマってば!」

 結構な力で肩を叩いてみてもアスマは起きる気配がない。
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