Devilの教え
「おい」

「…………」

「お前なあ……」

「…………」

 アスマの大きな溜息が聞こえたあと、俯いたままのあたしの視界に、床にコトンと置かれたジュースの缶が入った。


 ずっと持っていた缶を置いたアスマの手が、あたしの肩に載る。


 帰れって怒鳴られでもするのかと、顔を上げたあたしの目の前に、至近距離まで詰められたアスマの顔があった。


「酔ってるからだぞ」

 小さく呟かれた言葉の意味を聞く事は出来なかった。


 少しだけ傾けられたその端整な顔が近付いたかと思った次の瞬間には、唇に柔らかい感触を感じた。


 引き寄せるように力を込められた、肩にあるアスマの手。
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