Devilの教え
「難しい?」

「うん。答えを出すって難しいじゃん? 自分の事でも難しいのに、人の事なら尚更難しいじゃん」

 もしかするとこれまでも、ずっと前からそうだったのかもしれない。


「あたし、誰かの相談とか乗った事ないから難しいとか分かんないです」

「人に何かを言う時って無責任な事言えないじゃん? その一言でその人がどうなるかって決まるんなら余計に何も言えない。だから話は聞くけど相談には乗らない」

 アサミ先輩はずっと前からこうして「待ち人」を待っていたのかもしれない。


 ただそれが、マサキさんなのかスガ先輩なのか、あたしには分からないけど。


「話聞いてあげようか?」とアサミ先輩の視線がようやくあたしに向けられた。


 その目が凄く優しくて、少しだけ話を聞いてもらいたくなった。


 誰にも言えないから余計に辛く思えるような気がする。


 だから話せば少しくらいは楽になるかもしれない。
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