Devilの教え
「うん。分からない方がいいかも」

 自嘲的な笑みを口許に作るアサミ先輩の目は、ずっとドアに向けられてる。


「待ち人」は――来ない。


「だから結局、アスマが周りに言われてる程、悪い奴なのか、それともいい奴なのか分からないのよ」

「……はい」

「でもスズの話聞いてると、悪い奴には思えないね」

「……悪い奴じゃないです」

「見る側の問題かもね」

「見る側?」

「スズにはアスマがいい人間に見えるから、スズの口から出てくるアスマはいい奴に思えるって事」

 チラリと流し目で見つめられ、アサミ先輩独特の色気にドキッとした。


 こうして見ると同じ妖艶さでも、アスマとアサミ先輩は違う。
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