Devilの教え
「あたしが何考えるか分かるの?」

「何となくは」

「な、何で分かるの?」

「何でってお前、頭悪そうじゃん」

 意地の悪そうな小さな笑い声が脳に響く。


 目の前にいる悪魔の、闇に浮かぶぼんやりとした輪郭が幻のように思える。


「腹減ったなあ」

 耳につく低いその声に、数秒反応出来なかったのは頭がボーッとしてたからで、


「チョ、チョコレートならあるよ?」

 慌ててそう言いながら、昨日からずっと手提げ鞄に入ってる“元”彼氏へのバレンタイン用のチョコレートを取り出した理由も、頭がボーッとしてたからだと思う。


 あたしなりに綺麗にラッピングしたチョコレートの箱を見て、悪魔が驚いたように目を見開いた。――ように見えた。
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