Devilの教え
 その表情を見て、「こういう物」をあげようとするのは失礼になるのかと焦った。


 一応“元”だけど彼氏の為に作った物だし、違う人に渡そうと思って作った「本命チョコレート」をあげるっていうのは、貰う側からしても気を遣うし、やっぱり迷惑なのかもしれない。


 だから。


「こ、これで良かったら。どうせ捨てるしかないし」

 言い訳するみたいに慌ててそう言い加えたけど、「捨てる物」をあげようとした事が逆に失礼になるのかもって直後に焦った。


 だけど悪魔は口許に笑みを作り、ゆっくりとその手を伸ばすと、


「んじゃまあ、ありがたく」

 チョコレート以上に甘く、妖艶な雰囲気を纏ってあたしの手からチョコレートの箱を受け取った。


 吸ってた煙草を足元に落とし、しゃがんだまま器用にその火を踏み付けて消した悪魔は、ガサゴソと丁寧とは言いがたい手付きで包装紙を破いてく。
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