Devilの教え


 あたしが泣きやむまでそこにいてくれたアスマは、「約束の時間過ぎたじゃねえか」と文句を言いつつも、「あとはスガに聞いてもらえ」って似合わない優しい声を出して帰っていった。


 結局のところ、「運命」ってのが何なのか分からない。


 アスマが言ったように、それはただの願望で、実際はないものなのかもしれない。


 だけど。


 だけど――。


「悪い! スズ! 待たせた! ……って、あれ? アスマさんは?」

「用があるからって帰りました」

「ああ、そっか。あっ、向こうに自販機あったんだよ。寒かったろ。コーヒー飲め」

「うん」

「どうした? 鼻声になってんぞ?」

「ちょっと寒かったからかな?」

「そっか。悪かったな。結構遅くなったし、帰るか」

「うん」


――だけど、あたしがアスマと出会った事は「運命」だと思う。




 第一話  了
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