Devilの教え
 驚かせようと勢い良く開けたドア。


 誰よりも先に驚いたのは、あたしだった。


 きっと「稀にある」んだろうその現場を、()の当たりにした時他の人がどんな反応をするのか分からない。


 怒鳴り散らすとか、泣き喚くとか、逃げるように帰るとか、人それぞれにあるんだと思う。


 あたしは何故か呆然としてしまって、数秒声も出さずに立ち(すく)んでた。


 視線の先にはセミダブルのベッド。


 壁際に置いてあるそのベッドの、ベッドカバーはあたしが買った物。


 あたしの好きな色にして、あたし用の枕も買った。


 なのにそこにいるのはあたしじゃなく、知らない女の子。


 何故か裸のまま寝てる、知らない女の子。


 あたしの彼氏のベッドで、あたしの彼氏の隣で、あたしの彼氏の腕枕で——。


「……にしてんの……?」

 数秒の沈黙を置いて口から出た第一声は、自分でも聞き取りにくい震えた小さな声。
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