Devilの教え
 だけどあたしは何故だか俯き、アスマから視線を逸らせた。


 見ちゃいけないものを見てしまったような、そんな気持ちだった。


 不謹慎な事を考えちゃったりする下世話なあたしだけど、実際そういうものを目にすると妙にオロオロしてしまう。


 だから近付いてくるアスマの気配が通り過ぎるまで俯いてる事にしようと思った。


 不自然な感じにならないように、意味なく鞄の中を(あさ)ったりした。


 探し物をしてますアピールをする鞄の中には、お菓子の食べカスしか入ってなくて、誰かに鞄の中を覗かれたら、バカだと思われるとかそんな事を考えてた。


 いつの間にか街のざわめきは耳には届いてこなかった。


 ただ気ダルそうに歩くアスマの足音が――本当はそんなもの聞こえてくるはずはないのに――気になって仕方ない。


 アスマの気配が近付いてくる。
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