Devilの教え

不運


「ス、スズ」

「ん?」

「な、名前! あたしの名前、スズ!」

 顔を上げたあたしが口にしたのは、この場には似つかわしくない自己紹介で、


「ああ、そうか」

 アスマもあたしと同じくらい似つかわしくなく、普通に納得する。


 似つかわしくないと思うのは状況が状況だからで、ほんの数十秒前までアスマと一緒にいた女の人がこっちを見てる。


 普通なら声なんて掛けないと思う。


 仮令(たとえ)友達だったとしても、この場合は素通りすると思う。


 だけどアスマはそんな事お構いなしって感じで。
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