俺の変わり果てた気持ちは、君にいつ伝わりますか。
2.自覚なしの天然はずるすぎる
蒼空side
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
旧校舎に入ると、ひんやりした空気に包まれる。
相場、こういう時に使われるのは
旧図書室だ
階段を降り、1階の旧図書室へ向かう
薄暗い廊下に光が漏れていた
「やっぱここか…」
ガラガラッ!
堂々と開けた
開けて早々目に入るのは全然嬉しくない光景で、
図書室の奥、窓際に追い詰められている寿羽がいた。
「寿羽!」
「蒼空くん……!」
心做しか、泣きそうになっている気がする。
「またお前かよ」
低い声は、倉本のものだった。
「いやそれ、俺のセリフだから」
「言ったよな、倉本。寿羽は俺のだって」
寿羽の腕を引き、胸に引き寄せる。
バランスを崩した寿羽を後ろから抱きしめる。
「そ、蒼空くん…なんでここに?」
「なんとなく」
「それよりも、お前、変なことしてないだろな」
殺気立てて睨むが効いてなさそうなのが、俺をより腹立たせる。
「お前っていいとろで、邪魔するよな」
まあ、諦めないけど
そう言って倉本は足早に出ていった。
倉本 颯太(クラモト ソウタ)。
別に女癖が悪いとかそういう悪い噂は聞いたことがなかったが、最近の寿羽との距離感に違和感を感じる。
何されたのかとか、どうしてここに居るのかとか、約束って何だったのかとか、いいところってどういう意味だとか、どう考えても聞きたいことはたくさんあるのに、
そんなの、今はどうでもよくて
「寿羽」
強く抱きしめる。もう離れないでほしいという、気持ちを込めて。
「蒼空くん、く、苦しいよ」
解こうとしてくるけど、緩めてやらない。
後ろから抱きしめられていて、俺の顔が見えないため不安なのだろう。
「おこってる、?」
今にも泣きそうな声で、言うから
「怒ってない」
怒ってはいない、けど
「蒼空くん…?」
「妬いた」
「えっ」
何を?なんて場違いな聞き方をしてくるもんだから
助かったけど、
「何もない」
今、この顔を見せられない
情けなく赤い顔をしているから
「寿羽、帰ろう」
しばらくして、寿羽を解放し、教室に戻った。
帰路、俺はこのまま帰すつもりはない。
「で、何してたの。約束か何か知らないけど、聞くまで帰さないから」
「っ、、」
ほんのり顔が赤くなっている寿羽を見逃さなかった。
それと同時に、胸の奥が黒く染っていくのがわかった。
寿羽side
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日の放課後、倉本くんと約束通り旧図書室に行くことになった。
「倉本くんって、お芝居習っていたんだね」
「まあね。劇とか本番があるにはあるんだけど、全然配役に選ばれなくてさ」
彼の表情は、お芝居に対する真剣さを感じる。
「お稽古だけじゃ間に合わないなって困ってたんだ」
私に何ができるのかはわからないけど、精一杯手伝いたい!と思った。
そう、頼まれたのはお芝居の練習相手。
ガラガラッ
「私、初めて旧図書室来た…!」
今回のお手伝いには。ちょっとワクワクした気持ちがあった。
古びた本棚と、ギッシリ並べられた本たち。
そして、少し奥には大きな窓があった。
夕日に照らされる中庭が写真みたいだった。
その綺麗さに見惚れて、吸い込まれるように窓の方へ移動していた。
だから、ドアを閉めてくれていた倉本くんが真後ろまで来ていることに気づいていなくて、
「寿羽ちゃん」
呼ばれて振り返ると彼がすぐそこにいて、
「えっと、く、倉本くん」
手が伸びてくる。
唇に細い指が優しく当てられる。
「っ、、」
頭の中は大忙しで
そ、そうか。もうお芝居の練習が始まっているんだ…!
でもどうしたらいいのかなんてさっぱりわからない、
ぎゅっと目を瞑った。
「なんでそんなに可愛いわけ」
予想外のセリフに驚いて目を開いた
「へっ」
目の前には倉本くんの顔が迫っていた。
そんな、目瞑ってくれちゃうならさ、
「キス、しちゃうけど。いいの?」
そんなこと言われて
「キキキキス?!えっと、!私、そんな」
なんて言ったらいいのかわからず、
倉本くんのブレザーの裾を引くことしかできなかった。
「やばいね、その顔……」
頭の後ろに手が回ってくる。
どうしよう……!
誰か、助けて…
蒼空くん……助けて…!!
そう願った時だった。
ガラガラッ!
「寿羽!」
大好きな幼なじみの声が聞こえて
「蒼空くん……!」
全身の力が抜けた。
蒼空side
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ということなの」
事の経緯を話し終えて、
心配そうな表情が向けられる。
「あのさ」
ずっと黙って聞いていた俺の一声で
彼女の明るいブラウンの瞳が揺れる。
「はあ……」
もう文句の一つすら出てこなくなっていた
怒りよりも悲しみが大きかった。
でも、
「される前でよかった」
「…なにが?」
怒ってないの?と顔を覗き込んでくる。
「怒ってない、とにかく無事でよかった」
怒ってないことが伝わったようで、
今度は元気になった笑顔を向けてくる。
「蒼空くん、ありがとう」
なんとなく、あの日を思い出した。
「なんだか、あの日みたいだね」
心を読まれたかのような発言に驚いた。
「え」
「蒼空くんはいつも助けてくれる。今も昔も」
愛おしそうに見つめてくるくせに、
次の言葉は俺の心を抉った。
「大好きな幼なじみだよ。ずっと、このままがいいな」
幼なじみ……ずっと、このまま………
「ねえなんでさ、倉本のキス、嫌だと思ったの」
少々ヤケになっていた。
普段は聞かないようなことをぶつけた。
突然の質問に戸惑っているのがわかる。
うーんと真面目に考えて、
「そ、それは、好きじゃないから、かな」
って、
「それじゃあさ、」
愚問だと思いながらも、
「もし、俺が寿羽とキスしたいって言ったら、してくれるの?」
思いついたことは声になっていた
だんだんと明るめブラウンの瞳が見開かれていく
「っ、、それは!」
「それは?」
俺のことは大好きって言ってくれたよね。なんて揚げ足を取って意地悪を言ってしまう。
アタフタしている寿羽が可愛くて、可愛いすぎる。
「………わ、わかんない」
みるみるうちに顔が真っ赤で、
「もう帰る!」
いつの間にか、寿羽の家の前に着いていたらしい。
「送ってくれてありがとう、また明日ね」
顔は伏せたままそう言って、玄関に入っていった。
蒼空side
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい倉本」
危険人物の背中が見えたので迷わず声をかけた。
移動教室なのだろう。科学の教科書を持っている。
「出たおじゃま虫」
俺の顔を見て第一声がそれだった。
でも俺は無視して続ける。
「芝居かなんか知らないが、くだらねえことに寿羽を付き合わすな」
もう二度と近寄るな。とも。
「くだらなくなんかないよ」
かぶせてくる。
それに、とこいつは口を開く
「そういうのって寿羽ちゃんが決めることじゃない?」
「何が嫌とか、誰といたいかとか、そういうのお前が決めることじゃないだろ」
「は」
そんなことはわかってる。
わかってるけど、そういう問題ではない。
「俺に取られるって心配なんだ」
ニヤついた顔で言ってくるのが心底俺をイラつかせる。
「そんなわけ」
「だったらさ、寿羽ちゃんに決めてもらおうよ」
「勝負」
お前が勝てば、もう二度と寿羽ちゃんに近づかないって約束するよ
すました顔で提案してくる。
「待て、何で勝負すんだ」
条件を飲むには早すぎる
「今日から1ヶ月、寿羽ちゃんと接触禁止。
その間に寿羽ちゃんから告られたらお前の勝ち。
1ヶ月以内にお前が告られなければ、1ヶ月後に俺は寿羽ちゃんに告る。
もちろん、俺は1ヶ月間アピールさせてもらうけどな」
もとから決めていたかのようにスラスラと口を動かす。
告白……
「……」
「なに、やめとく?」
所詮お前らって幼なじみでしかないもんねー
と付け加えてくる。
「のった」
あいつの口角が上がっていくとともに吐き気がした。
……でも、これでハッキリする
寿羽が俺のことをどう思ってるのか
正直自信はない…けど、
けど、俺の片思いが無駄じゃなかったって信じたい……
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旧校舎に入ると、ひんやりした空気に包まれる。
相場、こういう時に使われるのは
旧図書室だ
階段を降り、1階の旧図書室へ向かう
薄暗い廊下に光が漏れていた
「やっぱここか…」
ガラガラッ!
堂々と開けた
開けて早々目に入るのは全然嬉しくない光景で、
図書室の奥、窓際に追い詰められている寿羽がいた。
「寿羽!」
「蒼空くん……!」
心做しか、泣きそうになっている気がする。
「またお前かよ」
低い声は、倉本のものだった。
「いやそれ、俺のセリフだから」
「言ったよな、倉本。寿羽は俺のだって」
寿羽の腕を引き、胸に引き寄せる。
バランスを崩した寿羽を後ろから抱きしめる。
「そ、蒼空くん…なんでここに?」
「なんとなく」
「それよりも、お前、変なことしてないだろな」
殺気立てて睨むが効いてなさそうなのが、俺をより腹立たせる。
「お前っていいとろで、邪魔するよな」
まあ、諦めないけど
そう言って倉本は足早に出ていった。
倉本 颯太(クラモト ソウタ)。
別に女癖が悪いとかそういう悪い噂は聞いたことがなかったが、最近の寿羽との距離感に違和感を感じる。
何されたのかとか、どうしてここに居るのかとか、約束って何だったのかとか、いいところってどういう意味だとか、どう考えても聞きたいことはたくさんあるのに、
そんなの、今はどうでもよくて
「寿羽」
強く抱きしめる。もう離れないでほしいという、気持ちを込めて。
「蒼空くん、く、苦しいよ」
解こうとしてくるけど、緩めてやらない。
後ろから抱きしめられていて、俺の顔が見えないため不安なのだろう。
「おこってる、?」
今にも泣きそうな声で、言うから
「怒ってない」
怒ってはいない、けど
「蒼空くん…?」
「妬いた」
「えっ」
何を?なんて場違いな聞き方をしてくるもんだから
助かったけど、
「何もない」
今、この顔を見せられない
情けなく赤い顔をしているから
「寿羽、帰ろう」
しばらくして、寿羽を解放し、教室に戻った。
帰路、俺はこのまま帰すつもりはない。
「で、何してたの。約束か何か知らないけど、聞くまで帰さないから」
「っ、、」
ほんのり顔が赤くなっている寿羽を見逃さなかった。
それと同時に、胸の奥が黒く染っていくのがわかった。
寿羽side
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今日の放課後、倉本くんと約束通り旧図書室に行くことになった。
「倉本くんって、お芝居習っていたんだね」
「まあね。劇とか本番があるにはあるんだけど、全然配役に選ばれなくてさ」
彼の表情は、お芝居に対する真剣さを感じる。
「お稽古だけじゃ間に合わないなって困ってたんだ」
私に何ができるのかはわからないけど、精一杯手伝いたい!と思った。
そう、頼まれたのはお芝居の練習相手。
ガラガラッ
「私、初めて旧図書室来た…!」
今回のお手伝いには。ちょっとワクワクした気持ちがあった。
古びた本棚と、ギッシリ並べられた本たち。
そして、少し奥には大きな窓があった。
夕日に照らされる中庭が写真みたいだった。
その綺麗さに見惚れて、吸い込まれるように窓の方へ移動していた。
だから、ドアを閉めてくれていた倉本くんが真後ろまで来ていることに気づいていなくて、
「寿羽ちゃん」
呼ばれて振り返ると彼がすぐそこにいて、
「えっと、く、倉本くん」
手が伸びてくる。
唇に細い指が優しく当てられる。
「っ、、」
頭の中は大忙しで
そ、そうか。もうお芝居の練習が始まっているんだ…!
でもどうしたらいいのかなんてさっぱりわからない、
ぎゅっと目を瞑った。
「なんでそんなに可愛いわけ」
予想外のセリフに驚いて目を開いた
「へっ」
目の前には倉本くんの顔が迫っていた。
そんな、目瞑ってくれちゃうならさ、
「キス、しちゃうけど。いいの?」
そんなこと言われて
「キキキキス?!えっと、!私、そんな」
なんて言ったらいいのかわからず、
倉本くんのブレザーの裾を引くことしかできなかった。
「やばいね、その顔……」
頭の後ろに手が回ってくる。
どうしよう……!
誰か、助けて…
蒼空くん……助けて…!!
そう願った時だった。
ガラガラッ!
「寿羽!」
大好きな幼なじみの声が聞こえて
「蒼空くん……!」
全身の力が抜けた。
蒼空side
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ということなの」
事の経緯を話し終えて、
心配そうな表情が向けられる。
「あのさ」
ずっと黙って聞いていた俺の一声で
彼女の明るいブラウンの瞳が揺れる。
「はあ……」
もう文句の一つすら出てこなくなっていた
怒りよりも悲しみが大きかった。
でも、
「される前でよかった」
「…なにが?」
怒ってないの?と顔を覗き込んでくる。
「怒ってない、とにかく無事でよかった」
怒ってないことが伝わったようで、
今度は元気になった笑顔を向けてくる。
「蒼空くん、ありがとう」
なんとなく、あの日を思い出した。
「なんだか、あの日みたいだね」
心を読まれたかのような発言に驚いた。
「え」
「蒼空くんはいつも助けてくれる。今も昔も」
愛おしそうに見つめてくるくせに、
次の言葉は俺の心を抉った。
「大好きな幼なじみだよ。ずっと、このままがいいな」
幼なじみ……ずっと、このまま………
「ねえなんでさ、倉本のキス、嫌だと思ったの」
少々ヤケになっていた。
普段は聞かないようなことをぶつけた。
突然の質問に戸惑っているのがわかる。
うーんと真面目に考えて、
「そ、それは、好きじゃないから、かな」
って、
「それじゃあさ、」
愚問だと思いながらも、
「もし、俺が寿羽とキスしたいって言ったら、してくれるの?」
思いついたことは声になっていた
だんだんと明るめブラウンの瞳が見開かれていく
「っ、、それは!」
「それは?」
俺のことは大好きって言ってくれたよね。なんて揚げ足を取って意地悪を言ってしまう。
アタフタしている寿羽が可愛くて、可愛いすぎる。
「………わ、わかんない」
みるみるうちに顔が真っ赤で、
「もう帰る!」
いつの間にか、寿羽の家の前に着いていたらしい。
「送ってくれてありがとう、また明日ね」
顔は伏せたままそう言って、玄関に入っていった。
蒼空side
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい倉本」
危険人物の背中が見えたので迷わず声をかけた。
移動教室なのだろう。科学の教科書を持っている。
「出たおじゃま虫」
俺の顔を見て第一声がそれだった。
でも俺は無視して続ける。
「芝居かなんか知らないが、くだらねえことに寿羽を付き合わすな」
もう二度と近寄るな。とも。
「くだらなくなんかないよ」
かぶせてくる。
それに、とこいつは口を開く
「そういうのって寿羽ちゃんが決めることじゃない?」
「何が嫌とか、誰といたいかとか、そういうのお前が決めることじゃないだろ」
「は」
そんなことはわかってる。
わかってるけど、そういう問題ではない。
「俺に取られるって心配なんだ」
ニヤついた顔で言ってくるのが心底俺をイラつかせる。
「そんなわけ」
「だったらさ、寿羽ちゃんに決めてもらおうよ」
「勝負」
お前が勝てば、もう二度と寿羽ちゃんに近づかないって約束するよ
すました顔で提案してくる。
「待て、何で勝負すんだ」
条件を飲むには早すぎる
「今日から1ヶ月、寿羽ちゃんと接触禁止。
その間に寿羽ちゃんから告られたらお前の勝ち。
1ヶ月以内にお前が告られなければ、1ヶ月後に俺は寿羽ちゃんに告る。
もちろん、俺は1ヶ月間アピールさせてもらうけどな」
もとから決めていたかのようにスラスラと口を動かす。
告白……
「……」
「なに、やめとく?」
所詮お前らって幼なじみでしかないもんねー
と付け加えてくる。
「のった」
あいつの口角が上がっていくとともに吐き気がした。
……でも、これでハッキリする
寿羽が俺のことをどう思ってるのか
正直自信はない…けど、
けど、俺の片思いが無駄じゃなかったって信じたい……