青い月は、春を待つ。


よく電話が鳴る事務所内。
ここは、取引先の会社から発注を受けるのが主な業務の事務所だ。

商品の部門別に4つの班に分かれており、わたしの班には主任の見浦さん、パートの深田さん、村田さん、黒田さん、そして今春入社したばかりの新人の青倉くんがいる。

一応、わたしはこの班の課長を務めており、毎日"女だから"と馬鹿にされないよう必死に働いている。

すると、うちの班の電話が鳴った。
基本的には、パートの人たちに電話を取ってもらうことになっているのだが、深田、村田、黒田の3人組は、まるで電話の音が聞こえていないかのようにお喋りを続けていた。

「誰か、電話対応お願いします。」

わたしがそう言うと、3人は一斉にこちらを向き、嫌な顔をする。

そして、仕方ないなぁ、というような表情で深田さんが電話を取った。

「はい、大山福井の深田がお受け致します。」

急にコロッと変わる猫なで声。

深田さんはわたしよりも10歳以上年上だが、上層部にその猫なで声でゴマをするのが得意な人なのだ。

村田さんはというと、わたしと大した変わらない年齢だが、気が強く、取引先相手に上から目線で話してしまうような人。

黒田さんはわたしの3つ年下でマイペースな人だが、前職で主任を務めていたせいか、わたしは主任!というような仕事出来るオーラを放っている人で、本当に仕事が出来るなら問題ないのだが、実際のところは、、、という感じだった。

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