青い月は、春を待つ。
「今日はきちんと休憩取れよ?残業もしないで帰ること。もし田んぼ三姉妹が仕事残しそうだったら、俺が言ってやるから。」
「うん、今日は休憩ちゃんと取るわ。でも、田んぼ三姉妹には言わなくて大丈夫。杉井課長が注意すると、わたしの味方をしたって深田さんが不機嫌になって厄介だから。」
わたしがそう言うと、杉井課長は苦笑いを浮かべた。
「とにかく、無理するなよ。」
杉井課長はそう言うと、給湯室から出て行った。
「はぁ、、、。」
朝から溜め息しか出ない。
わたしは珈琲を飲み終えると、気持ちを切り替え、自分のデスクへと戻った。
うちの班の様子を見ると、早口の見浦さんから何かを教えてもらいながら、必死に理解しようとしている青倉くんに、いつもの調子で手が動かず口ばかり動かしている田んぼ三姉妹。
いつもと変わらない光景。
わたしは自分に気合いを入れると、昨日出来なかった本来の自分の仕事である課長業から始めた。
すると、「あのぉ、、、すいません、、、。」と静かに話し掛けてくる声が聞こえ、ふと横を向いた。
わたしに話し掛けてきたのは、一番端の泉谷課長の班のパートの木村さんだった。
「あの、、、印鑑いただけませんか?」
そう言い、木村さんはわたしにミスをした書類を差し出してきた。
「あぁ、はいはい。」
わたしは書類を受け取ると印鑑を押し、「頑張ってね。」と木村さんに書類を返した。
木村さんは「ありがとうございます。」と一礼すると、こっそりと自分の班の方に戻って行った。
きっと泉谷課長に印鑑もらうのが怖かったんだろうなぁ。
そう思いながら、わたしは自分の業務に戻った。