青い月は、春を待つ。

そして、休憩時間。

みんなぞろぞろと食堂へ向かって行く中、わたしはキリの良いところまで打ち込みを終わらせてしまいたくて、1人事務所に残っていた。

「はぁ、、、疲れた。」

とりあえず、キリの良いところで一度手を止めると、わたしは給湯室へ向かった。

給湯室にはエスプレッソマシーンがあり、わたしはいつもあまり誰も来ないこの給湯室で珈琲を飲みながら、窓の外を眺めるのが唯一、一息つける時間だった。

すると、給湯室のドアが開き、ふとドアの方に目をやると、入ってきたのは隣の班の杉井課長だった。

「お疲れ。やっぱりここに居たか。」
「お疲れ〜。」
「今日も忙しそうだね。」
「当たり前だよ。田んぼ三姉妹が仕事しないから。」
「相変わらずか。」

杉井課長は、唯一気軽に話が出来る存在で、わたしが課長へ昇進する試験を受ける時に手伝ってくれた人でもある。

身長が180センチ程あり、実年齢は50歳のはずなのに40代前半に見えるという深田さんお気に入りの課長なのだ。

そして、"田んぼ三姉妹"というのは、深田、村田、黒田の"田"が付く3人組のこと。

わたしと杉井課長しか知らない呼び方だ。

「また深田さん、杉井課長のこと探してるんじゃないの?一緒にご飯食べたくて。」
「深田さんずっと喋ってるから、隣に居ると休憩にならないんだよ。」
「モテる男は大変だね〜。」
「若い頃は女を泣かせてきたからなぁ。」
「はいはい、その話は何回も聞きました。女を泣かせるなんて最低だけどね。」

杉井課長とそんな話をしながら、わたしは短い休憩を終えた。

1時間きっちり休憩など取っていたら、仕事が終わらないからだ。

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