青い月は、春を待つ。
すると、深田さんが「青倉くん!まだ歓迎会してなかったから、これから飲みに行かない?」と青倉くんを誘っていた。
青倉くんは驚いた表情を浮かべながら、「春瀬課長がまだ仕事をしているのにですか?」と言った。
「春瀬課長は、わたしたちよりたくさん給料を貰っているのよ?だから、たくさん働いて当たり前なの!だから、気にすることないよ!」
深田さんがそう言うと、青倉くんは不思議そうな表情を浮かべ、「でも、、、」と言いながら、わたしのデスクに田んぼ三姉妹が積んだ書類に目をやった。
「深田さんたちが残した仕事を片付ける為に春瀬課長は残業するんですよね?失礼ですけど、お喋りして仕事を残して給料を貰うのは当然なことなんですか?」
青倉くんの言葉に表情が引きつる深田さん。
正統なこととはいえ、ハッキリとものを言える青倉くんにわたしは驚いた。
「じゃ、じゃあ、歓迎会は今度にしよっか。じゃあ、お疲れ様でーす。」
そう言いながら、小さくなって帰って行く深田さんに、そのあとに続く村田さんと黒田さん。
田んぼ三姉妹が居なくなったあと、杉井課長が来て、「君、凄いね!」と青倉くんの肩をポンッと叩いていた。
「え?だって、おかしくないですか?」
「青倉くんの言う通りだ。君は、正統なことを言っただけだよな?」
杉井課長はそう言うと、青倉くんに向けて「君、気に入った。」と言い、それからわたしに「お疲れさん。無理すんなよ。」と言い残し、退社して行った。
「青倉くん、ありがとう。」
わたしがそう言うと、青倉くんは少し照れながら「いえ、思ったこと言っただけなんで。」と言ったのだった。