青い月は、春を待つ。
縁結びに入ると、仕事帰りのサラリーマンだらけだった。
わたしと青倉くんはカウンター席に座ると、メニューを見る。
「青倉くんってお酒飲めるの?」
わたしがそう訊くと、青倉くんは「一応飲めるんですけど、強くはないです。」と答えた。
「実はわたしもなの。わたし、レモンサワーにしようかな。」
「じゃあ、俺も同じので。」
「青倉くんもレモンサワーね。」
そして、わたしはカウンターの向こうに居る大将に「レモンサワー2つお願いします!」と注文した。
「みんな揃ってなかなか歓迎会出来なくてごめんね。」
わたしがそう言うと、青倉くんは「いえ、春瀬課長とこうして飲めるだけで嬉しいです!俺、春瀬課長のこと尊敬してるんで。」と言ってくれた。
「わたしなんて尊敬されるようなとこ何もないよ?」
「そんなことないです!俺は、まだ入社して2ヵ月くらいしか経ってませんけど、明らかに社内で一番テキパキ仕事してるのは春瀬課長です。泉谷課長や内山課長のように無駄に怒ったりしないし、、、ミスする事は良くないですけど、あんなの公開処刑じゃないですか。」
青倉くんの言う泉谷課長と内山課長はパワハラ課長として社内では有名で、少しのミスでも容赦無く怒鳴り散らす課長たちだった。
そのくせ自分たちのミスは、何もなかったように揉み消すのだ。
「まぁね、あの課長たちはやり過ぎよね。確かにミスをしたら注意することが必要な時もあるけど、ミスをして一番落ち込んで反省するのは本人じゃない?落ち込んでいるところに追い打ちをかけるようなことをしたくないから、わたしは怒らないだけ。」
わたしがそう言うと、青倉くんは「俺、春瀬課長の班に入れて良かったです!」と言うと、わたしに笑顔を見せてくれた。