ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~

30:公爵領の宿屋跡02

 前世風に言うなら、クラシカルな建物。またはレトロ。
 この世界では、まぁ手入れを多少サボったよくある建物。それがこの宿屋跡だった。

 石造りの建物の前には庭があり、枯れた草花が土に返りそうでそのままに残っている。
 きちんと手入れをしたら、テラス席とか作ってカフェもできそうだ。

「中に入るよ。もしかしたら、床が古びていて危ないかもしれないから、手を繋いでおこう」
「え? あ、はい」

 親切心。親切心、よね?
 でも嬉しいからまぁ良いか。
 ギース様に手を重ね、ゆっくりと中に入る。

「わぁっ」

 一歩中に入ると、大きな階段が左右から弧を描いた形で二階から降りてきていた。
 その階段には赤い絨毯が敷かれている。
 前世で見たクラシカルホテルのよう。

「あそこの真ん中くらいに立って、ウエディングドレスの裾をたらして写真撮ると映えそうよねぇ」
「しゃしん? ばえ?」

「あ、なんというか……絵姿を描いたら良さそう、と思って」
「それは良いな! レダ、ここの宿屋を復活させたら、挙式のあとのパーティを開けるようにするのはどうだろうか」

 何故か少しだけそわそわした様子で、ギース様が言う。声が妙に嬉しそうだ。

「良いアイデアですね。この宿屋の使い道が見えてきました」
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