ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~

31:公爵領の宿屋跡03

「この部屋は、金のある商人などが泊まっていたと思う」

 そう紹介された部屋は、いわゆるスイートルームだった。
 続き部屋がいくつかあり、その中の一つは浴室だ。
 ふむ……。ここは新郎新婦が宿泊できる部屋としようか。

 もちろん、お金を払えばそれ以外の人も泊まれるけど、最優先は新郎新婦だ。
 部屋の中は特別クラシカルでロマンティックな作りにしたい。
 頭の中にいろいろなイメージがわいてくるから不思議ね。

 再び一階に戻り、宿の中をくまなく見学していると、ふと後ろ側にある建物が目に入った。

「あっちの建物はなんですか?」
「あぁ。ここの従業員が住み込みで働いていたときの寮だな」

 そちらも見せて貰うと、寮として使える場所の他にも部屋がある。
 これはもう本当に絶好の場所だった、と改めて感じてしまった。

「ここに、マッサージと接遇の学校を作りましょう。講師は、タウンハウスやカントリーハウスの侍女たちです」
「侍女たち?」
「ええ。もちろん彼女たちの中で、やりたいという人だけですが」

 不思議そうな顔をするギース様に、私はにやりと笑いかけた。

「侍女という仕事が天職の人もいれば、もっと他に試してみたいけれど、ある程度の立場の女性が働ける場所がないから、ということもあるでしょう。だから、人に何かを教えたい、とか多くの人にサービスを提供したい、という気持ちのある人には、その場所を用意したいのです」

 一気に口にして、一呼吸置く。
 私が一番伝えたいことは、このあとだ。

「それに、このサービスを商品にすれば、この領地に来る理由にもなるし、領民の仕事の選択肢も増えます」

 前世、私にだってやってみたい仕事はあった。
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