ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
「まぁ。とりあえずお茶でも飲んで」

 その言葉に、先ほどのフルーツティが供された。

「ヌッカヌガーのお茶ですね」
「あら、ご存じなの?」
「ええ。その──このヌッカヌガーは、もしかしてご領地で?」

「ああその通りだ。以前栽培していたのだが、いろいろあって最近ようやく復活させることができてな」
「す、素晴らしい!」

 今度はテッサ様が立ち上がる番だった。
 彼女は私の手を取り、上下に振る。

「領主夫人! レダ夫人! このヌッガヌガーで、アロマオイルを作らせていただけないでしょうか」

 私の腕が上下にぼろりと転げ落ちてしまいそうなほどの勢い。
 思わず目が回りそうになった。

「はい、ストップ。テッサ嬢、落ち着いて」

 ギース様が後ろから私を抱き留める。
 座っているから、倒れることはないと思っていたけれど、後ろ側によろめいていたらしい。

「あっ、た、大変失礼を」
「いいえ、びっくりしたけれど大丈夫。それに、あなたの今の言葉を聞いて、やっぱり雇うことにして良かったと思ったのよ」
「え、それは」

 私は、体勢を立て直してから、ヌッガヌガーのお茶を一口飲み込む。
 鼻を通る柑橘の香りが心地良い。
 にっこりと笑い、彼女に笑いかけた。

「私も、ヌッガヌガーのオイルが作れないかと思っていたのだから」
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