ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
 でもまぁ、いちいち領主夫人が挨拶に行かない方が、お忍び感があって良いのかもしれない。

「そこから、他の貴族夫人、令嬢、それに裕福な商家の方々がいらっしゃり、近くのレストランでお食事をしたり、ガラス細工をご購入されたり……」
「うん。確かにその報告は上がってきている。俺も確認済みだよ」

「ギース様っ! どうして私に教えてくださらなかったの?!」
「だって、教えたらあなたは屋敷を飛び出していたでしょう?」
「……ソノトオリデス、ハイ」

 そんな私に、ギース様は笑いながら書類を手渡してくれた。

「実際に領地の活気を見てから、資料を見る方がワクワクするかと思ってね」
「ご配慮……!」

 ありがたい。私が一番浮かれる方法を理解してくれているのだもの。
 その書類には、この一週間のエステの売上げと、訪問客の顧客リストがあった。

 正直に言うと……。

 すごい。

 この一言だ。
 まず顧客が上は公爵夫人、下は──という言い方は良くないけれど──商家の店員までいる。
 商家の店員は、おそらく商家夫人に連れられてきたのだろう。
 これは早々に廉価版のサービスを用意すべきだ。

 そう思ったタイミングで、ホテルに到着した。
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