ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
「私も、物心ついた頃にはもう虐げられていたので、耐えることが美徳だと思い、逆らえば殴られると思い、ただただ耐え忍んで参りました」

 だからこそ、薄幸の少女のような空気を纏っては、周囲の一挙手一投足に怯えて生きてきたのよね。
 そう考えると、本当にこれまでのレダはかわいそうだわ。

 本当は、早く頭を上げ、立ち上がり、もっと外の大人を味方に付けて反抗すべきだったのだろう。
 でも、虐待され続けた子どもが、そんなことできるだろうか。
 できるわけが──ない。

「でもね」

 そこで言葉を切り、二人を見る。

「我慢するのなんて、馬鹿らしいって気付いたの。どう考えても元凶なのに責任転嫁するお父様も、お母様がいなくて寂しいだなんて言いながら、自分には父親や周りに使用人がいて愛されているのに、孤立している年下の私を虐げて悦に入っているお兄様も、ただの虫けらのような価値のない存在なのに、どうして私一人が耐えないといけないのかしら、って」

 前世の記憶が戻った私は知っているのだ。
 知は財産だと。

 この世界、ありがたいことに貴族の子どもは義務として学校で勉強ができる。
 そこで得た知識のうちの一つが、私を生かしてくれるのだ。

「お父様、お兄様。貴族法第七条を覚えています?」
「な、ななじょう?」
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