ドアマットヒロインは、 速攻終了いたします!~堅物のはずがワンコの公爵様に溺愛されてます~
「では、私との縁を切りましょう。この家と私は今後一切関係ない、と正式に貴族院に申請することに合意いただけるのであれば、今はその件は不問にしますわ」

 私の言葉にお父さまもお兄様も表情が明るくなる。
 私というサンドバッグがなくなっても、彼らは何も困らないものね。

 ふふ。
 相手の言葉をきちんと吟味するのが、貴族というものなのに。
 その点彼らは完全に落第点ね。

 ギース様なんて、無表情を装っているけれど、あれは笑うのをこらえているわね。
 私もおかしくて顔が緩みそうなのを、必死でこらえている。それが表情筋を固くして見せているのかもしれないけれど。

「契約書の為の紙とペン、それから私の婚約に関する書類、それに使用人の契約書を持ってきて」

 壁際に立つ執事に指示を出すと、彼は眉をひそめる。まだ立場がわかっていないようね。

「この家の女主人であるお母様がいない今、家政の権限は娘である私になります。それは貴族法十二条の七に記載されている項目よ。執事であるあなたなら、もちろんそれがどういうことか理解できるわよね?」
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